モバゲータウン異聞録/ケータイ小説は、多分『ニコニコ小説』
今日、モバゲータウンに登録しました。
というのも、先日三年間愛用したTalbyがボロボロになってしまい仕方なくInfobar2に機種変更し、パケット定額プランに加入したので、せっかくだしやってみるかなと思ったのがきっかけ。
序
リア充中高生の巣窟と名高いモバゲータウン。まず登録画面からしてレベルが高い。最初にハンドルネームの登録が求められるんだけど、注意書きが
『全角6文字以内、絵文字不可』
おぅふ、ここはもうモバゲータウンの入り口。人間界の常識は通用しない感じが伝わってくる。で、PC文化圏の名前を引き継ぎたくなかったので『まとぺ』と入力して確定したところ
「まとぺ」はすでに使われています。下の名前から選びますか?
「まとぺ♪」
「★まとぺ★」
「☆まとぺ☆」
ぎゃあああすごい名前をお勧めされたああああ!!
仕方ないのでもうちょっとかわいい感じの他の名前にしましたが、よく考えてみたらユーザー名に全角文字を許可するというのはなかなか合理的で面白い。どうもモバゲー住民も、『あゆみ★・゚』みたいな感じに「名前+記号」の組み合わせで名前衝突を回避してるらしい。Webサービスによくあるアルファベットアカウントでは、ayumi41とか、アジの無い感じになってしまう。全角なら記号部に色々細工できて面白い。なるほど。日本でしか展開しないサービスなら、そういうのもいいかもしれない。
で、その後年齢・職業・趣味・自己紹介をもらさず書くと登録が終了する。こんなアバターが出てきた。
ピチピチ短パン少年キター!!と思ったけど、実はこれは短パンじゃなくボクサーパンツで、パンツ一丁の姿でモバゲータウンに投げ出されたのだと把握。それは恥ずかしい!早く服を買わなくては!!と思わせてしまうところが非常に巧いですね。強制的に消費行動に移されます。掴みはグッド。
いそぎ「ショップ」でデニムのパンツやチェック柄のシャツなどを見繕い、とりあえずさわやかな服装に着替える。
こうなってくると背景が寂しく感じ、壁紙などを買ってしまいたくなります。素晴らしいですね。この、寂寥感をそそるグレイの色指定がいい仕事です。
さて衣食住の一つは足りたので、とりあえずモバゲータウンを歩き回ってみる事にした。
まず目についたのがニュース機能。mixiみたいにニュースを配信しているらしく、見てみると『19歳少年が銃乱射、8人死亡、少年は自殺』という見出し。……これは!!邪気眼!邪気眼!という訳で「みんなのニュース日記」を漁ってみた。うん、まあ、なんだ。思わずReblogしたくなるようなクオリティの高い16歳*1は見つかったけど、意外とみんな中高生としてマトモな反応をしていておじさん安心した。
とりあえず導入ここまでで、ユーザーエクスペリエンスとして外しが一つもない。これはすごくよく考えられているし、売れるのも納得な気はする。
破
そこまですませて力つきて放っておいたんですが、2時間ほどしてからモバゲーから通知メールが来た。読んだ。中二女子に友達に誘われていた。なにこれなにこれ!!モバゲータウン怖いよ!!取り乱しつつも俺は中二女子のプロフィールを見に行った訳ですが。
「保存日記☆見てね(ハート)絡み強制やでぇ★」
読み逃げ禁止きたあああああああ!!モバイルの街で俺は読み逃げ禁止を見た!
ちなみにこの娘、すんごいいい加減な感じの日記が一つあるだけで、なんか良くわかってないのでfollow返し…じゃないや、友達許諾してません。どうしたもんか……。
急
さて、折角モバゲーに来たんだし肝心のゲームをやろう!…と思って色々落とそうと思ったんだけど、なにか今月初めに発売されたばかりのINFOBAR2は動作検証が済んでいないらしく、結論としてはゲームが一つも遊べなかった。うほっ。これ、全部のゲーム1台ずつ検証してるのか…。中の人、ご苦労様です。
ゲームが出来ないなら小説を読めば良いじゃない、という訳で、読みましたよ、ケータイ小説。正確に言うとまだ数十ページしか読んでないんですが、色々思うところがあったので書く。
前提(これは以前から思っていた事)
- ケータイ小説の出現を小説、文学の質の低下であると捉える事はナンセンス。シロートが書きシロートが読む新しい表現ジャンルが出現したというだけの事じゃない?
- ケータイ小説を紙媒体で読む事に対する違和感。これはかつて電車男が2chスレ→まとめサイト→メディアミックスへと拡大して行く過程で多くのオタクが感じたのと同じ種類の違和感。ref:以前のTwitterでの発言
読んだのは『乙女座<ん』氏著『FlowerChild&Rock』。閲覧総数は2万6千。乙女座<んは新潟在住の29歳だそう。
文章は、噂に違わぬ酷さでした。文章の構造がガタガタ。邪気眼臭も濃厚。
僕はこの女を殴りたい衝動に駆られた。
僕はブランド物が大嫌いだった。
特にルイヴィトンが嫌いだった。
ブランドモノを持たなきゃ
自分の価値を高められない
そんなヤツばかりだ。
死んでしまえ!
糞ったれが!
レッドツェッペリンの
「天国への階段」を
100回聴いてから首を吊れ!
価値とは人が作った流行を
真似る事ではない。
自分で探し上げたモノこそ
本当の価値なのだ
こんな文章を読んでニヤニヤするなと言う方が無理だ。まあ、中学生の共感なら得られそうではあるけど。とは言いながら割と楽しんで読んでますが。
で、そんなケータイ小説を読みながら思ったのは、ケータイ小説を「小説」にカテゴライズするのは、例えばBlogを小説だと言うくらいピントが外れているっぽいという事。むしろ俺は、「ケータイ小説」とは、ケータイ文化圏における『ニコニコ動画』なんじゃないかと思った。
どういう事かというと、俺このスキだらけの小説を読みながら、思っちゃったんですよ。『これなら俺にでも書けそうだな…』。思ってから、ああ、これがケータイ小説という『ムーブメント』を支えている根底の感覚だと気づいて愕然とした。つまり、単純に、非常にヌルい創作意欲が刺激された。これは多分、ニコニコに動画を投稿する職人と、多分同じ気持ちなんじゃないかなと。
そう考えると、ケータイ小説は非常にニコニコ動画に似ているように思える。
- 技術的には稚拙だが、消費しがいのあるコンテンツがアップロードされる
- スキだらけであるが故に、多くのユーザーの創作意欲が刺激され、ユーザーがコンテンツの作り手に廻る。
- コメントやメッセージによる作者と読者のダイレクトな交流がある。
- 集積された作品には、ファンが増える、『ランキング上位になる』など、大きなレスポンスが返ってくる。
ちなみにレスポンスの話で言えば、この『FlowerChild&Rock』の閲覧総数は2万6千。他に調べてみたら、トップ掲載の作品は閲覧総数176万だった。これ、ちょっと凄い。数だけ見ればミリオンじゃん。例えばブログで、どんなに有名なブロガーが素晴らしいエントリーを書いても、多分その記事が100万回読まれる事は殆ど無いんじゃないか?あるのかな?他に例を出せば、例えば、現在日本で最もアツいCGM集積地であるニコニコ動画。このサイトで最も再生された動画でも、260万再生しかされていない。PCサイトのニコニコと違い、サイト外部からリンク導線が引かれにくいモバイルサイトでこの数字は、正直に言って驚異的じゃないか。小説を書いて少し注目されれば何万人もの人間に読んでもらえるメディア。こんなの今まで無かった。
結論:
- ケータイ小説のコンテンツとしての不完全さは、ニコニコ動画の稚拙さと同種の物である。そこで重視されるのはコンテンツそのものではなく、作者と読者とのコミュニケーション。一体感。
- 『ケータイ小説』=『ニコニコ小説』と理解できるんじゃないか。
- PCにおけるリッチコンテンツである動画のニコニコ動画、ケータイにおけるリッチコンテンツである小説のモバゲータウン、それぞれのWebに、同じコミュニケーション形態のメディアが同時に発生したのは非常に興味深い現象。
- 大上段に言うとすれば、この、書き手と消費者がダイナミックに転換するための消費/生産構造は、単にニコニコ動画やモバゲータウンと言ったサービスにとどまらず、梅田望夫曰くの『国民総表現社会』を本当に実現してしまうかもしれない。
- かつて、創作は原作者のものであり、近年までは、作品を創作し発表するのは、変な言い方だけど同人作家、あるいはウェブマスター以上に許された「特権」だった。しかしこの、「創作者」と「ファン」の、「愚劣な」直結フィードバック構造は、創作・発表の可能性を、本当の意味で"rest of us"に解放する鍵なのかもしれない。
…とっ散らかってしまったけど、そんな事を考えていた。
補遺
6:05結論部以降一部追記。眠い。
*1:『毎日退屈なんだろ?俺たちがぶっ放してやるよ。アナキスト、背徳主義者で夢は殺し屋かパブリック・エネミーになること。腐敗した日本に破戒を。』(自己紹介より一部抜粋)やべえ転載する指が止まらねえ