小野マトペの業務日誌(アニメ制作してない篇)

はてなダイアリーの閉鎖をうけ、旧ブログ http://d.hatena.ne.jp/ono_matope/ から移行しました。続きは→ http://matope.hatenablog.com/

王と鳥観てきた。

何だかんだで観てから一週間近く経ってしまった!でも思い出して書く。書かないと忘れるので。雑だけど。

王と鳥 [DVD]

王と鳥 [DVD]

先月だったか、J-WAVEの番組に高畑勲が出てきて『王と鳥』の宣伝をしていた。『今は『セカチュー』だの『イマアイ』だのと、ただのお涙頂戴の映画ばかりが流行っているが、たまには自分の頭で考える映画を観てほしい』と言っていた。中二病かよ。


その文脈は番組側が用意したものかも知らんのでいいけど、そのまま聴いてたら番組の最後で護憲シンポジウムの宣伝をはじめて、なんだかなぁと。映画自体が思想性を帯びるのは俺は全然構わないんだけど、配給主が映画をプロバガンダ利用するのはどうよ。公開初日の爆笑問題田中との対談イベントも反ネオリベとしてのキャスティングなのは明白だし、どうにも周辺の政治臭さが鼻についてしまうニャー。まあ、高畑さんだから仕方ないんだけど。


ところで、実は俺は『王と鳥』は半分初見じゃないんですよね。受験生時代に後半だけ観た事があって。あの頃俺はよく深夜3時ごろのテレビで気分転換をしていたのだけど(深夜のテレビは『劇場中継』とかあって面白かった。劇団☆新感線とか。)暗い部屋でチャンネルを廻していたら、変なフランスアニメがやっていて、ナンジャコリャーと。速攻で録画してOrangeに見せたり。それが『王と鳥』だと知ったのは半年ほどして、『世界と日本のアニメーションベスト150』を読んだ時でした。


なので、今回は半分再見なのだけど、やっぱり通して観ると全然印象ちがいますな(当たり前)。以下箇条書き(考えがまとまらない時は箇条書きでいきます。)。

  1. 煙突掃除夫ってモチーフはなにか反権力のシンボルなんだろうか。昔観た反戦影絵アニメの『煙突屋ペロー』も煙突掃除だったし。
  2. あのロボットって、頭に乗って操縦したり、必殺技はルストハリケーン(ただの風)だったりで、マジンガーZ似。
  3. パースがめちゃくちゃついているので、画面の手前-奥方向へのキャラの移動は全て超高速。ウケる。
  4. 前半の高所恐怖症的美術の妙。
  5. 垂直的権力構造を破壊しつくすロボットが、何かGoogleに見えた。『フラット化する社会(isbn:4532312795)』っていうんですか?つか『グーグル(isbn:4166605011)』とかを読んでいて、既存の市場を破壊して瓦礫の上にただ一人立つ巨人っていうのは、俺の中では『王と鳥』のロボットのイメージだった。今のGoogleがどうかは知らんけども。

美術的なスタイルの他にこの映画の面白いところは、反権力映画の様で実は違うところですよね。前半でさんざん滑稽な王様をコケにしているのだけど、鳥が王のおもちゃであったロボットを乗っ取りその垂直構造を破壊しはじめると、下層の貧民街の住民も、動物達も全て死に絶え、その城が『社会システムそのもの』だったことが明らかになるという、ある意味皮肉の効いた権力肯定の映画で。瓦礫の上で思案にくれるロボットのショットは、この映画で一番美しくみえる。『THX-1138(asin:B0002OXVLO)』みたいっすね。もしかして、ディストピア映画って『ラストショットの地平線』が成立要件?*1

*1:エピソード3もディストピア映画に!!