小野マトペの業務日誌(アニメ制作してない篇)

はてなダイアリーの閉鎖をうけ、旧ブログ http://d.hatena.ne.jp/ono_matope/ から移行しました。続きは→ http://matope.hatenablog.com/

『立喰師列伝』

学校の帰り際、以前から観たかった『トム・ヤム・クン!』を観ようと思い立ち時間を調べていたら、『立喰師列伝』が今日で最終上映だと言う情報に行き当たり、すっかり『トム・ヤム・クン!』モードだったためにいきなり『立喰師』を見る気にもなりづらく、中央線に乗ってる間散々迷いつつ、結局まあ渋谷シネクイントで観る事にした訳です。立ち食い蕎麦食ってから行きましたよ。ケツネそば
肝心の内容は今回に関してはあまり肝心でないので簡単に。押井守の映画って最初に観た後って言うのは、毎回『監督のその凄まじい執着はよく分かるんだけど、何が言いたかったかはよく分かんねえ』であり、咀嚼するのにDVDが発売されるくらいの時間を要して、今まさにその状態なので特に語れません。『戦後なるものたち』の生き様であり、『人狼 JIN-ROH [DVD]』を初めとする『架空戦後史シリーズ』に通低するテーマなんでしょうねとは思います。っていうかこの映画って、北野武の『TAKESHIS' [DVD]』みたいなもので、押井守の、少なくとも『紅い眼鏡』あたりを観ていないと意味が無いんじゃないだろうか。そういう意味ではオレはあまり観る資格がなさそうなんだけど、まあそれなりに楽しめました。『DAICONフィルム版 帰ってきたウルトラマン*1』がシレッと挿入されるとかのオタな笑いどころで充分に。(あ、当然『大真面目ギャグ』としての面白さってのは終始あっての上です。っていうか、メタとネタの境界が曖昧で不安になる。という狙いなのか。)
押井守の面白さって、嘘の吐き方が凄い上手いってあたりで、色々なシンボルとか演出とかセリフとかで、いつも『何か大きなもの』を浮かび上がらせるのだけど、でも観客は、漫然と観てるだけだとその背後にある関係性が見えなくて、『何が言いたいの?』って事になる。攻殻機動隊なんかは、割と作品内で関係性を結ぶためのピースが提供されるから、単体で観ても面白さが分かりやすいんだけど、今回はタイムボカン時代から続く押井守のライフワークといわれるだけあって、過去の作品への参照なんかも夥しくて、理解するには結構なパワーを要しそう。
とはいえメインテーマは『ポストモダン』と『戦後』との闘いらしい。実は昨日『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)』を買って、映画を観る数十分前に読み終わっていたというのはあまりにタイムリー。そっちもまだ咀嚼できてないのでこれ以上は何にも言いません。
映像的にはですね。江面久さんの映画でした。江面さんって云うのは、IGのヴィジュアルエフェクターで、オレはプレイステーション攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』のOPで始めてその仕事を観たのだけど、アレですよ。『イノセンス』でオレが勝手に『イノセンスフィルター』と呼ぶ肌の透明感の表現を開発し、『劇場版 テニスの王子様 二人のサムライ [DVD]』、『劇場版 XXX HOLiC 真夏ノ夜ノ夢 [DVD]』と一貫してデジタル時代のアニメ映像の『空気感』『陰影感』を担保し続けているエフェクターAfter Effectsでお金を貰っている人間としても観客としてもヒジョーに憧れを持っている人です。で、今作は全編その江面エフェクトが画面を構築していて、超満足。
…ハッ!内容は軽くとか言いながらこんなに書き散らしてしまった。