小野マトペの業務日誌(アニメ制作してない篇)

はてなダイアリーの閉鎖をうけ、旧ブログ http://d.hatena.ne.jp/ono_matope/ から移行しました。続きは→ http://matope.hatenablog.com/

ニッポニアニッポン(落ちネタバレ含む)

結婚しない三十女の本(ISBN:410130632X)と引き篭もりの本を立て続けに読みました。滅入るなあ。その前は乱歩だし。次はもうちょっと元気な本を選ぼう…。

ニッポニアニッポン (新潮文庫)

ニッポニアニッポン (新潮文庫)

ニッポニアニッポンと聞くとドラえもん(原作)の『のび太は世界でただ一匹』を思い出します。トキの学名がそれだとドラえもんに教えてもらいました。二年位前。で、名前に「トキ」が入っているというだけでなんだか過剰にトキに感情移入してしまった高校生のネオ麦茶ストーリーなんですが。
青年(少年)が犯罪を思い立って逮捕されるまでのお話というと『罪と罰』とか『ゴールドラッシュ』とか、『金閣寺』とか*1あるけど(金閣寺は逮捕描写ないけど)、これはなかなか凄かった。
何が凄いって、1ページ目から炸裂する、ラスコーリニコフ(@罪と罰)も裸足で逃げ出す、眩暈のするような思春期全開な視野狭窄的精神世界が。生活が消滅して、他人と話すことのなくなった人間特有の思考短絡が全編をつらぬき、気分が悪くなってくる(本当に電車の中で読み始めたとき、目の前がクラクラした)。ZAZEN BOYSでも聴きながらじゃないと読めません*2。しかしその精液くさいイタさは思春期の熱病としてリアルで身に覚えがあり、懐かしくもある。
読みながら、これがよく言われる『童貞をこじらす』って事なのかなあ、と(ちょっと違うと思いつつ)考えたり。この手の物語のセオリー通り、主人公は作戦を決行するために向かった佐渡島で萌え萌え女子中学生(笑)と萌え萌え*3になり、情にほだされる訳ですが、そういえば『罪と罰』も『ゴールドラッシュ』も、童貞系殺伐セカイの呪縛から、愛されることで『世間』に一歩踏み出す過程の話だなと。(あ、『バッファロー'66』も追加で)もしかしてこれって童貞文学というやつなんだろうか。違いますか。ごめんなさい。
しかし、クライマックスで高らかに流れる"Bohemian Raphsody"には痺れた。
追記:あとがきを読んで。ヒロイン二人の名前が『カードキャプターさくら』と『おジャ魔女どれみ』からの引用だったとは!サブカル恐るべし。

*1:ここで挙げた作品をあとがきで斉藤環が事も無げに挙げているのを知ったのはこれを書いた直後なので…、野暮とか云わないで

*2:聴きながらだと、むしろそういうものに見えてくる。

*3:『鼻声で「ひどいでしょ」と一言漏らし、端の先端を銜えたまま、瀬川文緒は潤んだ瞳で(攻略)』なんて、狙い過ぎだ。そこだけエロゲ系ラノベかよ!