小野マトペの業務日誌(アニメ制作してない篇)

はてなダイアリーの閉鎖をうけ、旧ブログ http://d.hatena.ne.jp/ono_matope/ から移行しました。続きは→ http://matope.hatenablog.com/

吉祥寺アニメワンダーランド

いやぁ、素晴らしかった。以下取り留めなく覚書。(まとめる気無し)
整理券を取ってから一時間あまりを吉祥寺のマンガ喫茶で動画をスキャニングして過ごして会場に入る。最初のパートは日本の自主制作アニメの歴史のお勉強。記録に残っている最初の自主アニメは30年頃のモノで、大藤信朗あたりのだとか、そんな感じでハナシが進んで、色々な初期のアニメーションを観るんだけど、林静一の「鬼恋歌」がやばかった。半島風に言うと鬼のソナタ。鬼が少女をレイプするアニメなんだけど、背景がモノクロ写真で緊張感バッチリだったり、レイプシーンは明らかに実写トレースで激エロだったりでとてもイイ。
あと、以前ラピュタ阿佐ヶ谷の上映会で観た古川タクの「コーヒーブレイク」、関係ないけど、今日あれを見て以前のジャンプの、澤井義夫が描くデスノートの企画で、天の助の持っているコーヒーカップがドンドンでかくなるネタの元ネタだと気付いた。そんなののパロディーやって何になるって言うんだ。澤井。
次のパートの「バカアニメの世界」が最高に興奮した。全編フライシャー兄弟の作品紹介で進行。俺は知らなかったんだけど、よくTシャツなんかで見かける変な外人女性のキャラクター、ベティー・ブープの作者らしい。このオッサン、34年にアメリカに映倫が出来てスポイルされるまでの30年から33年まで、エログロナンセンスの極みの、訳の分からない(でもすげえ面白い)アニメを作っていた。
もうストーリーとか成立させる気が微塵も無くて、企画会議ではフライシャーのオッサンが思いつく限りのギャグを考案し、アニメーターに「さあ作れ」と指示していたらしい。
で、そんなフライシャーの初期の、わりかしマトモな作品の「インク瓶小僧」。
ディズニーより全然前の作品なんだけど、面白いのが実写のフライシャー本人と、アニメーションのインク瓶小僧が合成で掛け合いを演じるという。
またベティー・ブープシリーズの「ha ha ha」でも、キャラクターがキャンバスの中と実写を行ったり来たりして、最終的に絵の中の笑いガス(?)が現実世界に飛び出して、時計や道行く人や車(アキラの、マサルの車の元ネタだと一目で分かった)が笑いもがくというお話。
実写とアニメのメタ構造が俺的に非常に気になったんだけど、竹熊氏曰く、実写とアニメの合成というのはアニメーションの最も原初的、古典的なスタイルで、絵を実写世界に配置するいことで絵が動くというセンスオブワンダーが引き立つんだと。ウム。んだんだ。
因みに、ベティー・ブープの一作目、ベッドに横たわり不自然に大きな目を見開いている様は間違うことなくアキラのキヨコでした。
最後のパート、氷川氏と竹熊氏の対談で、ぶっちゃけトークを交えつつアニメイヤー2004年を検証していますが、やはり業界人の大きな不安というものが露になっとりますなー。何気に成功してるアップルシードのハナシが出るたびに「ヤバイなー」とか口走っとったw。技術が普遍化し、要らなくなるのではないかという点でね。既にかつての撮影技師がいなくなったように。
しかし批評家である彼らに対して、当のゲスト湯浅政明氏は案外平気そうで、「まぁ、そうなったらそうなったでなんとかやって行きますよ」との事。まあ湯浅氏程の才能があれば不安も無いのは頷けるけど。もっと一介のアニメーターとかに心境を聞いてみたいなあ。アニメが工業製品として作られるようになりつつある現状に対して。
最後に湯浅氏に質問コーナーがあって、「これからのアニメーション表現についてどのような展望を持っておられるか」とか訊きたかったんだけど、なんかマインドゲームの表現についてもスゴい素で、「まあ、面白そうだからやりました」みたいな感じで訊いても何にも出てこなさそうだったので、訊けなかった。
 
今日の俺的スクープ。

  • ナウシカのオウム、アレの撮影は後ろでゴムで繋げて動かしているという(所謂ゴムマルチ)が定説化してたけど、それはウソで、パンタグラフ状のもので繋げていたらしい。そりゃそうだよね。ゴムじゃ出来ないよね。昔から不思議だったんだ。
  • 湯浅氏は現在、マインドゲームとは真逆の、カッチリしたオリジナル物のTVシリーズをやりたいと考えている。