小野マトペの業務日誌(アニメ制作してない篇)

はてなダイアリーの閉鎖をうけ、旧ブログ http://d.hatena.ne.jp/ono_matope/ から移行しました。続きは→ http://matope.hatenablog.com/

ザ・サーチ

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

読了。Googleを中心として、WebとWebの検索に可能性を見出した男達の戦いの記録、みたいな。
有名なGoogleダンスに翻弄される、零細ネットショップの悲喜こもごもとかを見て思うのが、Webっていうのは『Googleの下に完全』な世界なんだなと。現実世界っていうのは、地理的条件とか、色んな不具合があって不完全なんだけど、だからこそ沢山の人が生活できたんだよな。その不完全さを乗り越えるための手段を提供することで。田舎の品揃えの悪い本屋とか。でもWeb上ではそんな不完全さはなくて、あなたが欲しいと思った情報は一瞬で手に入り、俺が読みたい本は明日には間違いなく届いてしまうほど『完璧』なので、田舎の本屋さんは太刀打ちできないよね、ていうよく云われる話。
読んでるうちに、自分の生活がどれほど広告に影響されているのだろうと、怖くなる。バラエティ番組の間に流れるCMで吉本芸人がサラ金を宣伝するなんてレベルじゃないほど、ネット上の広告はオーガナイズされ、最適化され巧妙にユーザーに届けられる。俺の欲しがっているもの、これから欲しがるものを完璧に予言して、先回りして提供する。言葉が広告主に切り売りされ、ネットに書き込んだ言葉一つ一つがインデックスを付けられ、集積され、『(本書曰く)人類の意思』がミラーリングされる。我々の言葉はGoogleの手の中に握られてしまった!…みたいな?
なんだか『自分は広告に造られた幻想なんじゃないか』なんてアイデンティティの危機が訪れてしまいそう。現代に生きる以上仕様のない事で、なんでもない事なんだけど、やっぱり極度に自分たちに最適化されたビジョンっていうのは強烈な違和感を感じるよね。星進一みたい。素晴らしきかなデストピア